鬼才北野武が狂気と優しさの矛盾を描く
鬼才、北野武監督の力作
近年、お笑い芸人や映画や小説、音楽などの異分野でも才能を発揮していますが、この作品はそういった作品のなかでも極めて質の高いものになったいます。
お笑い芸人として頂点を極めたビートたけしが、映画監督としても才能を発揮し素晴らしい映画を発表していることは周知の通りです。
特に暴力の表現や独特の映像美は世界中で高く評価されており、この作品も第54回ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞している名作です。
追い詰められた男の狂気
優秀な刑事が、部下や同僚を死なせたり怪我を負わせたりし、さらには妻が不治の病になってしまいます。
その後は刑事を辞めて、妻の治療費のためヤクザから金を借りて、最後には銀行強盗を実行します。
その追い詰められていく過程を淡々と描き、静かな狂気をはらんだ男の姿をビートたけしが見事に演じています。
愛するものへの優しさ
凶暴で冷酷な一面を持つ主人公ですが、妻や元同僚、亡くなった部下の家族のことを気遣う優しさも持ち合わせています。
不幸な運命が重なり、破滅的な生き方をする主人公ですが、運が良ければ平穏で幸せな人生を送れたことを想像させるような面もあります。
ただ凶暴な男の狂気を描くだけでなく、一見相反するような繊細で義理堅い優しさを美しい映像で表現されているのがこの映画の芸術的な価値を高めています。
まとめ
現在まで北野武監督の作品は15作以上あり、多数の名作が発表されていますが、この作品は初期の映像美と暴力描写の生々しさを描いた名作です。