アメリカの暗部を描く「アメリカン・ビューティー」が美しい
アメリカの中流階級の実態
アメリカの中流階級は、大きな一戸建てに住み家族で仲良く暮らしているというイメージがあります。
そんなイメージ通りの理想的な家庭もありますが、実態はもっと多くの問題を抱えています。
この映画は、そんなアメリカの中流階級の理想に対するアンチテーゼと社会問題を危うい美しさで表現しています。
アメリカの社会問題
アメリカ社会では日本より個人主義で自由な生き方ができるようですが、その反面では厳しい結果主義と競争があります。
ケヴィン・スペイシー演じる主人公も、簡単に会社から解雇されて職を失ってしまいます。
妻は浮気をし、娘は親に反抗的な態度で振る舞い家庭は事実上崩壊しています。
さらにドラッグや銃の問題も絡み、最後には同性愛の問題から大きな事件に発展してしまいます。
強く家族愛に満ちたアメリカの家庭の理想を掲げていますが、実際には家庭不和や欲望による犯罪という問題を抱えているのがアメリカ社会の現状でしょう。
名優ケヴィン・スペイシーの見事な役作り
理想的な父親になれず、妻や娘から軽蔑される中年をケヴィン・スペイシーがリアルな存在感で演じています。
情けない中年男が開き直り、欲望と妄想に取りつかて破滅に向かっていく危うい過程はこの作品のスリリングな魅力となっています。
また、妄想と現実の間で揺れ動く心理描写を大胆かつ繊細に表現する演技は、名優と呼ばれる彼ならではでしょう。
美しい映像美
主人公の妄想を美しく芸術的な映像で表現しているのもこの映画の魅力です。
美しく繊細な女性を怪しく描き、暗示的にバラの花を使って心理描写をしています。
全体的に静かで薄暗い情景が多く、物語の危うさと刹那的な生き方に潜む美しさが伝わってきます。
まとめ
アメリカの理想的な生き方に対して、欲望に支配される人間の弱さと人生の意味を美しい映像と名優による素晴らしい演技で描かれた名作です。
若い人が観ても面白い作品ですが、ある程度の年齢になった人が見ると考えさせられることが多い映画でしょう。